20世紀後半に立ち現れたインタラクションデザインという概念は私たちを新しいデザインの現場へ連れて行ってくれるように思えました。しかし、2010年に至ってもなお多くの人々が20世紀中盤 - それは日本が敗戦から立ち直り、万博やオリンピックを経験し、世界の中心的なプレーヤとして認識さようとしていたころ夢見た世界を実現できていません。私たちは未だ20世紀の中に生き、21世紀のデザインを始めようとしているように思えません。
一方で、世界はインターネットにより時間的距離が劇的に近づき、他国の素晴らしいプロダクトを身近に感じるようになりました。Googleに代表されるウェブ技術とそのインタフェース、Appleに代表される前衛的なデザインを施された”コンピュータ”、IDEOに代表される新しいデザインプロセス。どれも私たちがあこがれる存在ではありますが、なぜ、これらが日本から発信できなかったのでしょうか?日本はデザイン後進国になってしまったのでしょうか?
私たちはSonyが好きでした。もちろん、Hondaも好きでした。Toyotaだって、Canonだって好きです。彼らは20世紀を代表する日本企業であり、私たちの誇りです。多くの日本企業の技術とデザインに世界が憧れた時代がありました。しかし、現状を鑑みたときに、これで良いと言えるでしょうか?私たちは現代日本に生きる人間としてこれから21世紀を代表する組織を作り、育てていく責任があります。
今世紀においてインタラクションデザインはどのようにして前世紀のデザインを超えていくのか?コンピュータは私たちの生活の中に浸透し、生活を変えようとしています。しかし、これはまだ始まったばかりです。これから私たちが提案するべき世界を、実現していく未来を、21世紀のデザインを始めるために、私たちはインタラクションデザイン研究会を立ち上げます。
第一回の研究会では今の日本のインタラクションデザイン業界をリードする人物として学術領域から慶応大学SFCの増井先生、慶応大学KMDの稲見先生を、産業領域からはTakramの田川氏、チームラボの猪子氏という豪華メンバーをお招きして現在のインタラクション業界を外観すると同時に、私たちが向かう方向性について議論をしたいと思います。